洗練された味が感動を呼ぶ フレンチシェフ鈴木道朗さん

シュマンドール

親子二代、思えば長いおつきあいである。私が最初に店を訪れたのは、食事に行ったのではなく、40年前、二十歳代半ばのころ、父親が病気の療養中「すずき」のスープが飲みたいという希望を特別聞き入れて貰い、独立開店したての店へ容器をもって取りに行ったことに始まる。

鈴木さんは、戦前から桐生にあった「桐葉軒」(とうようけん)というレストランで修業した。名前は古くさいが当時としては、他の街にもなかったハイカラな店だった。桐生は織都であり、京阪神や東京の百貨店、卸問屋の仕入れ方との交流が多かった。それだけに一流の味を誇った店が多かった。

「桐葉軒」(とうようけん)は、桐生倶楽部という政財界人の集まる建物の敷地の中にあった。フランス語も独学で習い、厳しい修業の後、22歳で料理長に抜擢された。通算12年の時を経て市内で「すずき」として独立、味のよさで繁盛した。

現在の場所に移転したのは1979年、本格フランス料理「ファンベックすずき」。ファンベックは「鋭いくちばし=食通」という意味だった。店は繁盛し、県内外でシェフとして活躍する20人以上の弟子も育てた。また、直弟子以外の他店で修業したシェフにも快く教えたことから、恩恵を受けた人も多く、「群馬のドン」といわれるゆえんでもある。

ファンベック開店の前に初めて渡仏、現地の一流料理店を食べ歩き、自分の料理がフランス料理であることを確信したという。そのころの鈴木さんは「味に妥協を許さない」という感じが料理にも表れていた。
自分の料理が完成したと思えるようになったのは「六十歳になってから」という。

だから、昨年の4月、店の改装を機に店名を「シュマンドール」(黄金の道)に変え、客席も40から29に減らした。そして、客席の目の前で料理をするオープンな「フィニッシュ・キッチン」方式に改めた。「お客様一人一人の料理人になる」という夢に一歩でも近づきたいためという。

鈴木さんの料理には、「洗練された」という形容詞がふさわしい。どれをとっても垢抜けている。だから、東京都内の一流店やホテルのシェフも食べに訪れ、味に驚嘆して帰るというが、好奇心の強い熱心なお客様には、料理の作り方を教えながら会話を楽しんでいるように見える。側で見ていても「教え上手」である。

近頃の料理は、洗練さを超えて、素材の扱い、ソースの味、味付けにしても、一種の遊び心(ゆとり)が伝わって来る。脱フランス料理・ステージアップの域に達したのかと見まごうばかりである。ここまで来たら、やがて料理の仙人「仙境」の域に達するまでの味を見たいものと思っている。まだまだ当分お付き合いが続きそうな料理人の一人である。


東洋医学(鍼灸・気功・食養・漢方薬)臨床経験30年の筆者の体験をもとに、 毎日を健康に暮らすための、お役立ち情報をお伝えいたします。

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