『医師がすすめる放射線ホルミシス』
「福島原発事故」以来、放射能に関する報道が日常的になってきました。私たち日本人は昭和20年・長崎・広島における原子爆弾の被害を受けた関係で、放射能に対して悪いイメージが染みついています。そして、原発におけるスリーマイル島(炉心溶融事故・1979年)およびチェルノブイリ原発事故(運転中の暴走・1986年)が、更に世界中にその危険性を暴露してしまいました。
加えて今回の「福島原発事故」で放射能拡散により大きな被害を蒙っているわけですからますますイメージが悪くなっています。同じ放射能を浴びるのに原子爆弾は「被爆」と言い、原子力発電の事故では「被曝」といって分けていますが、原爆の方は大量殺人兵器ですから、強大なエネルギーを一挙に爆発させて破壊を意図しているので「爆」であり、原発は意図しない事故ですから、放射能を浴びるのに場所、時間、距離などで濃淡の差が出るし、浴びた条件により個人差が出るため「曝」になります。
原子力発電による被曝は、原子爆弾と違い直ちに殺傷、火傷などの被害に遇うわけではありません。事故収束のために働く作業員や、被災地区の住民は数年後とか数カ月後とか時間の経過と共に発症するところに陰湿なものを感じます。
放射能は、放射線の種類によって半減期や安全量が違いますから、現在マスコミ報道にも混乱がみられます。従来、放射線に安全量はないといわれてきましたが、その実験データは1927年、米国の遺伝学者H.J.マラーによるもので、ショウジョウバエを使ってオスのハエにX線を照射すると、その子孫のハエの生存率を低下させる突然変異の頻度がX線の量に直線比例するという直線法則を発見し、後にノーベル賞まで貰いました。国連の国際放射線防護委員会(ICRP)もこれを採用し「放射線は少しでも危険である」という見解をとっていました。
しかし、マラーが実験したショウジョウバエ精子の細胞は、もともとDNA修復機能のないハエだったので、そもそも実験の条件が間違っていたのです。1927年当時は遺伝子の解析が全く進んでいない時でしたから無理もありませんが、間違った実験結果が長年科学の常識として科学・化学者を洗脳していたのです。このようなことは塩にも云えることで、1953年、アメリカのネーメリー博士の行った実験です。ダイコクネズミ10匹に、1日20〜30g、通常の20倍の食塩を加えたものを食べさせ、ノドが渇いて飲む水は1%の食塩を加えたものとした。半年後に、10匹のうち4匹が高血圧になった。それを塩が高血圧の原因と発表した。以後、「塩は高血圧の原因」が一般常識となったが、もともと実験の設定条件に無理があり、間違った結論が現在でも通用している好例です。
ところで、放射能に関してこの定説を覆したのがNASAの医学顧問でミズーリ大学の生命科学教授であったトーマス・D・ラッキー博士です。宇宙飛行士は2週間もの間、地球の何百倍という宇宙線(放射線)を浴びるが、身体にとってどのくらいのダメージになるのか、「人体への放射線の影響」を10年にわたり調査したのです。予想に反してその結果は「宇宙飛行士たちは宇宙に行くと元気になって帰ってくる」というものでした。
微量放射線は人体に対して刺激として働き、生体を活性化させ、生命活動にとってはかえって有益である——米国保健物理学会「Health Physics」誌(1982年12月号)に論文発表され、微弱な放射線による人体への効果は、ギリシャ語の「horme(刺激する)」より「放射線ホルミシス」と名付けられたのです。
それ以降、世界で放射能の安全性に対する検証の見直しが始まりました。
1985年8月、カリフォルニア大学医学部、米国エネルギー省、電力研究所共催「放射線ホルミシス専門家会議」
1988年、日本の電力中央研究所の依頼で岡山大学医学部でマウス実験開始。
1989年、岡田重文・放射線審議会委員長他、19名の学者・専門家で研究委員会発足。
1995年、秋、サンフランシスコで原子力学会の放射線臨時学会で、カリフォルニア大学医学部・マイロン・ポリコープ博士の「低レベル放射線規制の誤りを正す」特別講演。
1997年、スペイン・セビリアで、WHO (世界保健機構]とIAEA(国際原子力機関)共催の専門家会議では参加者との間に激論が交わされる。
2001年8月、フランシス医科学アカデミーのモーリス・チュピアーナ博士は「自然放射線の10万倍の線量率、つまり10ミリシーベルト/時以下の放射線による損傷に対して、DNAは充分修復され、修復不良のDNAをもつ細胞を除去する人体細胞の防御活動まで考慮すれば、自然放射線の10万倍以下の線量率であれば、長時間における照射でも、人体細胞はパーフェクトで、ガンなどの発生はない」という歴史的な発表をして、後にマリー・キューリー賞を受賞。
2006年、米国アカデミーで報告されたヴィレンチック博士の論文では「放射線に最も弱い精子細胞の実験でDNA修復限界は自然放射線の三千万倍(6000ミリシーベルト/時)であること」が確かめられました。
日本では、1985年電力中央研究所理事・特別顧問であった服部禎男先生がトーマス・D・ラッキー博士の論文を知り、アメリカ電力研究所に質問、責任ある回答を求めました。これがキッカケとなって国内で「放射線ホルミシスのプロジェクト研究」が始まったのです。そして平成19年(2007年)医療としての「放射線ホルミシス国際シンポジウム」がホルミシス臨床研究会主催で東京理科大学において開催されました。
平成20年(2008年)からは「第1回・放射線ホルミシス講演会」として専門家、研究者、臨床医師等が集まり、ホルミシス臨床研究会主催で東京理科大学において毎年開催されています。本年も7月24日に「第4回・放射線ホルミシス講演会」が開催予定です。
ホルミシスとは、ある物質が高濃度、あるいは大量に用いられた場合は有害であるのに、低濃度、あるいは微量に用いられれば逆に有益な作用を果たす現象のことです。放射線は大量に浴びると放射線障害を起こし、ひどい場合は死に至ります。しかし、放射線も低線量浴びた場合は人間に有益な作用があり、従来のX線やCTスキャンの診断でなくどのように治療に応用されているのかを示しているのが本書の内容です。
日本でも古くから民間で温泉療法として「放射線ホルミシス」は利用されてきました。秋田県・玉川温泉、鳥取県・三朝温泉のほか、ラジウム温泉、ラドン温泉などといわれるところが全国各地にあります。欧州・オーストリアのバードガスタインでは付属する病院で医師の管理・指導のもと天然ラドン坑道で放射線ホルミシス療法を長年行っている施設があり、世界中からさまざまな患者さんが訪れています。
日本の医療機関では「ホルミシス臨床研究会」に属する会員医師の医院や病院で放射線ホルミシス療法が行われています。ホルミシスルームと呼ばれる低線量の放射線を出す鉱石でつくった部屋またはボックスの中に入り、さまざまな疾患の治療が行われています。安全で高い効果が期待できる代替医療として、取り入れる開業医が徐々に増えています。
今、放射能や放射線はその有害面だけ報道されていますから無理からぬことですが、物事には東洋医学の診断法にあるように「陰陽・虚実・表裏・寒熱」という両面から診ないと正確な判断ができません。例えば毒薬のトリカブトも熱で加工して微量に使うと漢方薬では「附子」(ぶし)といって体を温める優れた薬となります。猛毒の砒素も、枇杷の葉に含まれるくらいの微量ですと「お灸枇杷療法」ではガンを治す力を発揮します。放射線もこれから研究が進むに連れ、さまざまな作用が解明されると思いますが、世界における医療の現況を知る良書と思います。また、放射能・放射線を正しく認識するためにも、この時期にあえて紹介する次第です。
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放射線ホルミシス臨床研究会編 (現在中古品のみ)
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