東洋医学(鍼灸・気功・食養・漢方薬)臨床経験30年の筆者の体験をもとに、毎日を健康に暮らすための、お役立ち情報をお伝えいたします。

医食同源お薦めの本-70「日本のお米、日本のご飯」

book-rice-400.jpg世界中どこの国でも「主食」という長い伝統につちかわれた食べ物を中心に毎日の食生活が営まれている。その主食は、その国にとって一番気候風土に合った食べ物であり、食べる人の体質に適合したものであり、長い年月にわたり祖先からの智恵が込められ栽培法も数々のノウハウが伝えられている。

だからどこの国でも主食の需要が減ることはないし、まして交替することはあり得ない。ところが、戦後一貫してわが国では主食である「お米」の消費が減り、しかも食糧の輸入が増えて自給率が先進国最低の国となってしまった。食べ物が店頭にはあふれ、一見豊かそうに見えるが、食べ物に対する考え方が「命をはぐくむ大切なもの」から、「食欲を満たすだけのエサ」という風に考える人が増えているのではないだろうか。

政府は最近になって『食育』を提唱し、自給率の向上を言い始めたが、国民の関心はそう高いように見えない。しかし、以前より『食』に対する意識は徐々にではあるが変化の兆しも出てきている。本書のような『お米、ご飯』に対する啓蒙書が発刊されたのは、今ここで何とかしなければという無意識の領域で衝動が書かせたものではないかと思える。

一般家庭での「お米」が持っている意味、取り扱い方、料理法、取り扱い方、お米を造り出す日本の気候風土の美しさ等々、数多くの写真と説明で、「お米」とは、これほど多様多彩な食べ物であったかを、いまさら思い知らされる。

普段、お米は「ご飯」に炊いて、副食で食べるという思い込みがあるが、本書には「お米の研ぎ方」「洗い米」「水加減」から始まり、塩むすびから焼きむすび、季節のまぜご飯、どんぶりもの、寿司(和風、洋風)、お弁当、お粥シリーズ、茶漬け、チャーハンなど中華や洋風に至るまで、お米料理の多彩さを再発見することでしょう。

これ一冊あれば、季節を問わず、副食をいろいろ考えることもなく、そのご飯に合った副食の作り方も添えてあるから、いろいろなバュリエーションを楽しめるとと共に、日本の「米文化」の奥深さに改めて知ることになります。もちろん、日本中どこでも利用できる食材を使っての料理ですから、各地方の独特の「米文化」が残っている料理を含めれば、本書の何倍にもなるでしょう。

日本の「米文化」の凄さを見直す機会として、ぜひ若い女性や若い主婦に必携、必読して頂きたい一冊です。


★著者・土井善晴(どいよしはる)
1957年大阪市生まれ。料理研究家「おいしいもの研究所」主宰。
スイス、フランス で西洋料理を学んだが、大阪の「味吉兆」で日本料理を修。 料理研究家の父、土井勝の遺志を継ぎ、「清く正しくおいしい日本の家庭料理」を提案する。テレビ、雑誌、レストランのメニュー開発など幅広く活躍。
『日本の家庭料理独習書』(高橋書店)、『土井家の一生もん2品献立』(講談社)など著書多数。この『日本のお米、日本のご飯』は、日本の主食であるお米の素晴らしさと、それを大切にしてきた私たちの祖先の思いを伝えたい、という趣旨で自身が企画した本。


★定価、1,800円(+税) 発行・講談社


医食同源お薦めの本-69「9割の病気は自分で治せる」

book-90%-400.jpg

本のタイトル9割という数字にいささか驚く人は多いでしょう。素人ならともかく、本職の医師が書いてあることだから、何か根拠のあることに違いないと思い、読み進むうちに、現在の医療体制の矛盾から由来していることがわかる。

推薦者の桐島洋子さんが「ここまで言っていいのか?」と心配しているが、医師とはいっても、現在は開業医、勤務医等の医療体制に組み込まれていない立場なので、自由にものが言えるのではないだろうか。とはいえ体制に組み込まれていたら、たちまち厚生労働省からは「異端者」、仲間うちからは「袋叩き」にされるに違いない。

9割の根拠、著者の病気カテゴリーを要約すると、(1)医者が関わっても関わらなくても治る病気。(2)医者がいないと治らない病気。(3)医者がいても治らない病気、に分類されるといいます。著者の体験によると95%以上の患者さんがカテゴリー(1)に属するという。開業医、病院勤務でも70~95%がカテゴリー(1)に属する患者さんで殆ど占められ、むしろカテゴリー(2)に属する患者さんが追いやられているのではないかとさえ思えるとの事です。

なぜそのような現象が起こるのかは、本文中に体験を通して書いてありますが、著者の言うカテゴリー(1)の病気は、感冒(風邪ひき)、高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風、心身症、うつ、腰痛、肩こり、頭痛、便秘、不眠、肥滿、ぜん息、アトピーなどを指しています。
これらの病気は、自分で治せる病気であり、今まで刷り込まれた病気の常識に対する間違い、なぜ医療相談をするのか、東洋医学の「未病」を治せば「病気にならない」等、当「医食同源」ブログでも主張している事と共通点が非常に多いのです。


病気が治るということは、具体的にどうすればよいのか。慢性疾患には根本治療が不可欠など、自己治癒力を高めるためのいろいろな方法が示されています。「姿勢」「呼吸」「食」「ツボ刺激」「歩行」「睡眠」など、お医者さんの世話にならなくても自分で治せる方法が提案されています。医療への依存心が中々抜けきれない方は、ぜひ一度お読みください。「目からウロコ」が落ちるのではないでしょうか。

特に「がん」に対する医療相談には力を入れ、ホームページ上からも問い合わせ出来るようです。悩んでいる方や、教えて上げたい方がいたら、こちらから入れます。

『e-クリニック』



文中、自分で出来る簡単な気功『易筋功』(いきんこう)は、スタッフの牟(む)先生が動画で分かりやすく解説しています。古典的な武道気功「易筋経」から、やさしい部分を抜粋して再編したものと思います。

『易筋功』・動画

文庫本で価格も安いのですが、中身は充実、価格以上の付加価値が多い一冊です。


★著者・岡本 裕(おかもとゆたか)
1957年大阪市生まれ。e-クリニック医師。医学博士。大阪大学医学部、
同大学院医学部卒。卒後12年あまり、大学病院、市中病院、阪大細胞工学
センターにて主として悪性腫瘍(がん)の臨床、研究に勤しむ。
1993年、従来の医療、医学の考え方と手法に限界を感じ、臨床医を止める。
阪神淡路大震災をきっかけに仲間とNPO法人「21世紀の医療と医学を考える会」
を立ち上げる。健康情報の発信、医療セミナーの開催等の活動。
現在まで2400名のがん患者の医療相談に応える。
著書に『死の宣告からの生還』(講談社)、『がん完治の必須条件』(かんぽう)等。

★定価、571円(+税) 発行・中経の文庫本

医食同源お薦めの本-68「ぬれマスク先生の免疫革命」

book-nuremasuku-400.jpg
昔から「風邪は万病のもと」というが、東洋医学では季節を問わずどんな病気も初期は風邪の症状を示す時期があるので「万病のもと」と認識していた。風邪やインフルエンザは寒い季節の病気と考えられているが、季節により増減があるだけで事実上の年間病である。そして、インフルエンザというと、何か特別な怖い病気と情報が刷り込まれているが、風邪の症状を起こすウィルスのひとつにしか過ぎません。

医師にしても、風邪とインフルエンザの違いを直ぐに区別、診断するのは容易でないといわれています。

著者は歯科医であるが、学生の頃はガンの細胞培養学専攻という変わり種。開業してからも自身でよくひいた風邪に悩まされ、悪戦苦闘の末「免疫と自律神経」の関係に行き着き、風邪を免疫力から考えて、予防と治療に「ぬれマスク」という方法を編み出した。

「ぬれマスク」は、簡単、安全、安価な方法で、目的は口呼吸を矯正し、正しい鼻呼吸に戻すものです。当ブログでも以前から「口呼吸をしない」「体を冷やさない」「寝相をよくして骨休め」を提唱してきました。しかし、「口呼吸をしない」といっても具体的にどうするかという場合、専門医でお金を払えば良い方法はいろいろありますが、簡単、安全、安価という方法は中々ありませんでした。

もちろん今まで推奨して来た「鼻洗浄、塩水うがい」は簡便、安全、安価な方法のひとつです。ただ、夜間就寝中のよい方法としてこの「ぬれマスク」法は推奨に値します。著者は、もうひとつうがいでなく、口に微温湯を含み、ブクブク・ゴックンで咽頭を湿らせることを推奨していますが、うがいとどちらが好いかは、少し実践して経過を見ないと今は何とも言えません。

「ぬれマスク」は、簡単だからといっても、医学的な裏付けと経験から実証済みの方法ですから間違いありません。早速、ドラッグテトアでガーゼマスクを購入して実験してみたが、マスクを鼻まで覆うわけではないので呼吸も楽である。(簡単とはいっても方法の詳細は本書をご参照下さい)更に、きちんと鼻で呼吸すると上気道の免疫力がアップすること、口呼吸の弊害が詳細に書いてある。

風邪・インフルエンザについては、予防ワクチンと治療薬の効果について大いなる疑問を提示し、その論拠が述べてある。「たかが呼吸、されど呼吸」ここを正せば、実は色々な思いがけない病気が治り、予防されていることがわかる。「ぬれマスク」は、その意味でも実用的でいろいろな効果が期待できる。

「鳥インフルエンザ」のような新型インフルエンザでも本書に述べてあることが理解できれば、必要以上に怖がることではない事が分る。簡単な方法だけに「論より証拠」すぐ実践出来ることなので、家庭必携の一冊として推奨いたします。



★著者・臼田篤伸(うすだとくのぶ)
1945年長野県生まれ。東京医科歯科大学歯学部大学院修了。歯学博士。
ガンの細胞培養学専攻。東京厚生年金病院歯科部長を経て、1976年
川口市にて歯科医院開業。かたわら風邪、ガンの研究に取り組む。
著書に『さらば風邪薬』(三一書房)、『こんなる効くぞぬれマスク』『抗ガン剤は
移転促進剤』(共に農文協)

★定価、1,200円(+税) 発行・ポプラ社

医食同源お薦めの本-67「落語家はなぜ噺を忘れないのか」

book-rakugo-400.jpg
初めて落語を聞いたのは小学校1~2年の終戦後であった。戦前からあった蓄音機でザァーザァー針音がするSPレコードだった。柳家金語楼の「兵隊もの」シリーズが何枚かあり、何十回も繰り返し聞いた記憶がある。小・中学生時代はもっぱらラジオで聞いた。

途中違う方へ目が行った時期もあるが、二十歳代の数年は正月になると「上野・鈴本」へ通った。そこで晩年の黒門町の師匠といわれた八代目・桂文楽の高座を大トリで何回か聞いたことがある。端正な顔つきと江戸弁は正統派の噺家(はなしか)らしい。残念ながら何回行っても奇才といわれた古今亭志ん生の高座を聞く機会がなく、もっぱらラジオで聞くほうが多かった。当時、まだ月の家圓鏡(現・橘家圓藏)、三遊亭円楽、三遊亭歌奴(現・円歌)、立川談志等は若手であり、先代の円歌や柳家小さんがベテランの域に入った頃だった。

近年の落語家で天才と言えるのは志ん生の息子・古今亭志ん朝に尽きるであろう。テレビドラマ(白黒時代)の中で一席伺っているシーンを初めて見たとき、噺のスピード、テンポ、歯切れのよさ、正当な江戸弁、どれをとっても凄い落語家が出て来たもんだと驚いた。後で志ん生の息子と知ったが、名実共に志ん生の名跡を継げると思ったが天才は早死にだった。

ところで、常々思っていた事に落語家は、年をとっても何十、何百という噺(はなし)を忘れず、しかも同じ噺の語り口が年齢とともにうま味を増し、味が出てくるのは何故だろうか、という事だった。しかも相当な高齢まで高座を勤め、ボケルこともない。

本書の著者は、人間国宝・柳家小さんが祖父であり、師匠である。小さんはどちらかと言えば才でなく努力型で、年齢と共に実力をつけて行った人であると思う。むしろ孫の花緑のほうが才を感じさせる。俳優さんやタレントは、台詞を強制的に詰め込むが、その映画やドラマが終われば忘れてしまうという。それは、脳に強制的に記憶させるから忘れるのも早く、また他の役の台詞を覚えなければならぬという事に関係があるかと思う。落語家の噺はアタマ(脳)で覚えるというより、体で覚える(身に沁みる)という作業ではないかと思う。だから、繰り返し反復し、腹に納めてそしゃくする中に噺に味が出てくる。

似たような事に「門前の小僧、習わぬ経を読む」という諺があるが、お坊さんの読経もアタマで記憶するものでなく、身につけるものではないかと思う。両者に共通するのは、高齢になっても「雀百まで踊り忘れず」と、少しも衰えないことである。

身に染みるまで体にたたき込むというのは、日本の伝承技能、芸能に共通することであり、現代の勉強法、記憶の良い学生だけが良い成績をとり、入学試験に受かるシステムは生理学的にも感心しない。

本書は、若手落語家の中では文も立つ有望株である。また、落語家の家に生まれ、伝統芸の家風で育っただけ自然と身についたものもある。落語好きが常に疑問に感じていた「なぜ、噺を忘れることがないのか」という疑問にうまく答えていると思う。一般人の老化防止にも役立つ一書ではないかと思いお薦めするものである。



★著者・柳家 花緑
本名・小林九(こばやしきゅう)1971年東京生まれ。
昭和62年(1987年)3月、祖父で人間国宝の五代目・柳家小さんに入門。
前座名・柳家九太郎、昭和64年二ツ目に昇進して小緑(ころく)。
平成6年(94年)3月、22歳で真打ちに昇進して花緑(かろく)。
2003年に落語界の活性化を目指し結成された「六人の会」(春風亭小朝・
笑福亭鶴瓶・林家正蔵・春風亭昇太・立川志の輔)メンバー。

★定価、800円(+税) 発行・角川SSC新書

医食同源お薦めの本-66「日本の食は安すぎる」

book-food-yasugiru-400.jpg
食料の自給率や食品の国内産ということに消費者の関心が以前と比べ物にならないほど高まっている事は間違いなの事実である。

全農(全国農業協同組合連合会)でも大きく新聞広告で「私たち全農グループは、生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋になります」とか「地産地消にこだわることで、食の未来が変わります」などキャンペーンを打っているが、建前と実情のギャップを多くの消費者は感じるのではなかろうか。

「地産地消」自体は結構なことではあるが、何かキャッチフレーズがご都合主義的に利用されているのではなかろうか。化学肥料や農薬の投与が長年にわたっている農産物が、安全性において、安心して食べられるかは別問題である。

私の知っている限り、農協という組織に組み込まれる事から脱皮して「有機農法」「無農薬農業」を目指した農家は、自前の販売ルート開拓や、価格が高い安いの問題、ときには消費者エゴともぶつかり大変な苦労を強いられているのが実情である。農協傘下の普通の農家も近年はアメリカ流価格破壊ビジネスが、農産物流通に持ち込まれ輸入農産物との価格競争には苦労している。

バブルがはじけて以降の20年近く、食品は「安くてよいもの」という流れで、流通も「価格は消費者が決める」という大義名分で生産者や加工業者に低価格を要求してきた。消費者も「安くて良いのが当たり前」という消費者至上主義に悪のりして来た感がある。

しかし、良い品物、まともな生産者が真っ当なものを作り、適正な価格で売ろうと思ったらそんなに安くはできない、というのが常識でわかるはずである。本文中「安いってことは、どこかにしわ寄せがいっているてことだよ。で、どこにそのしわ寄せがいくかといえば、食品の場合は、だいたい人の身体さ」という言葉は、いみじくも著者の考えを端的にあらわしていると思う。

農協の傘下に入らず自主独立路線を貫いて来た「有機農法や無農薬栽培」を標榜してきた農家は、現在でこそグループ化したり、農業法人組合を作ったりして、生産と販売の仕事分担が出来るようになったが、今から30年位前の農家は流通ルートの開拓に苦労した。どんな業界でも「良いもの」を作れば黙って売れるなどは幻想である。学生時代から農業に携わり、青果流通の仕事を裏表から見てきた著者だからこそ、生産者と消費者を結びつけるコンサルタントに使命を感じていると思う。

まともな感覚をもった消費者ならば「安すぎる」という逆説的な言葉の意味を理解できるであろうが、本書は食品の流通について、知られざる内情も書かれている。消費者としてわきまえでおいたほうが良いことが数々あり、流通の実情について中々伺いしれないことが多々あり勉強になる。

本書以外にお薦めは著者が書いているブログがある。知る人ぞ知る有名なブログらしいが、内容豊富でこれが面白い。全国各地の生産者との交流、いろいろな食材の紹介もあるが、東京を始めとする全国の料理や料理人のブログは、「ミシュランガイド」より親しみやすく、論評は料理に対する造詣の深さを感じさせる。単なるグルメブログとは一線を画するものと思う。カメラにも凝っていて、料理写真としては秀逸、ただ、大きい写真だけに、すぐ開かずちょっと重いのが玉にキズ。料理の写真はプロでもきれいに撮るのは難しい。写真だけを見ても楽しいブログである。

『やまけんの出張食い倒れ日記』



★著者・山本謙治
1971年愛媛県生まれ。慶応義塾大学環境情報学部、同大学院修士課程卒。
在学中に、畑サークル「八百藤」設立、キャンパス内外で野菜を栽培する。
㈱野村総合研究所、青果流通の㈱シラフを経て、2005年㈱グッドテーブルズ
を設立。農産物流通コンサルタントとして活躍中。
著書『やまけんの出張食い倒れ日記 東京編』アスキー社
『実践、農産物トレーサビリティ』誠文堂新光社

★定価、800円(+税) 発行・講談社新書

医食同源お薦めの本-65「野菜が壊れる」

book-yasai-400.jpg
このところマスコミも消費者も食品に関わる事件が輸入食品にばかり目が行っているようだこが、それでは国産品なら大丈夫かというと「灯台もと暗し」輸入食料の陰に隠れて問題が顕在化しないだけで、従来からの安全に関する問題はまだ進行形であることが本書によって明らかにされている。

では、何が問題なのかというと、一つには野菜の栄養価が、「日本食品標準成分表」のデータで平成12年(2000年)では昭和25年(1950年)比ほうれん草でビタミンC4分の1、鉄分で7分の1、昭和57年(1982年)比でもほうれん草ビタミンC35%減、鉄分で半減となっいます。60年前の野菜と見た目は同じでも栄養価は落ちている。高度成長時代の昭和57年(1982年)比でも、ビタミンC4で40%減、鉄分で2分の1ですから、農土として土が死にかけているという事です。他のあらゆる野菜にしても、栄養価がなくなっているのはもちろんですが、年配の方にとっては、香りも味わいも昔の野菜とすっかり違ってしまったと感じている方は多いのではないでしょうか。

これは何かと言ったら戦後の農業に導入され大量に使われた化学肥料が原因ですね。化学肥料を使用すれば土の中の自然生態系が破壊され、害虫が増え、いろいろな作物の病気が現れるから農薬を使用するという悪循環に陥ります。

著者は、大手の農機具会社で農業機械技術や營業企画に携わった経緯から、全国の農家の実情を把握していることがわかります。戦後の農家は、農協という組織によって技術指導、産地指定、種の購入、化学肥料、農薬、農業機械の購入、出荷、販売に至るまで組み込まれてしまいました。それどころか、生活用品、家電製品、自動車、保険、旅行にいたるまで気がついたときには多額のローンなどでもガンジガラメされていたわけです。

ではそのような仕組みは農協自体が考え出したのかというと、その背景には日本の戦後高度成長時代、産業構造がもたらした国策の一環であった事が本書から読み取れます。石油化学工業の副産物、自動車産業、製鉄工業の産業廃棄物が化学肥料の原料です。つまり、これらを肥料として売れば一石二鳥の利益とコストダウンになる産業側と、廃棄物処理場として利用される農業という図式が国策として描かれたと読み取れます。

長年日本の農地を化学肥料漬け、農薬まみれにして行き着いたところの一つが亜硝酸態窒素の問題です。野菜の殘留亜硝酸塩については、

キパワーソルト資料室『チンゲン菜の硝酸塩チッソが消えた!』

キパワーソルト資料室『小松菜の硝酸塩チッソが消えた!』

で紹介しています。

本書は、その影響が日本の酪農、畜産にまで深刻な影響を及ぼしていることに言及していますが、最終的には国民・消費者がどれだけ深く関心を持ち、どのように対応するかにかかっていると思います。「まだ、間に合う」と結論づけていますが、輸入食品の危険性をあげつらう風潮に流されず、自国の実情も「脚下照顧」、国内農業の現状を知り、将来を展望する上で参考になる一冊と考えます。


★著者・新留勝行
1943年鹿児島県生まれ。農業研究者、鹿児島県立南大隈高等学校卒。
鹿児島県立拓殖講習所へ入所アメリカへ農業研修生として派遣さる。
株式会社ジェム設立、同社代表取締役会長。


★定価、700円(+税) 発行・集英社新書

医食同源お薦めの本-64「まいにち玄米ごはん」

book-everydaygenmai-400.jpg

一昨年来の食品の産地偽装事件、賞味期限の付け替え、インチキ加工食品など、また昨年は中国産の毒ギョーザ事件を始めとする様々な食品に関わる事件が起きたため、消費者の意識が少しずつ変わって来たように感じられます。

加えて昨年夏からの急激な景気の変動、しかも100年に一度と言われるほどの大不況に遭遇し、倹約志向が高まってきたようです。毎日の食事も加工食品やデリカの購入を控える、外食も回数を減らすなど、皆が右へならえをすると外食産業などは結構てきめんに影響が出ていますね。

反面、家庭でお米の消費が大分増えるなど今までと違った傾向も伺えます。嗜好より、毎日のランニングコストからして家庭で作るご飯のほうが安くつくという理由のようです。それでもご飯の消費が増えるのは、健康面でも食料自給率の向上という点においても結構なことです。

しかし、健康面また栄養からいえば白米より玄米食のほうがベターなのですが、特別関心のある人以外、玄米はとかく敬遠されがちです。炊くのに大変、何かボソボソして不味そう、というイメージがつきまとっているようです。しかし、著者は「始めてみれば、意外とかんたん」という事です。まず炊く釜からして現在は、家庭用の炊飯器でも炊けるようになっています。その他、鋳物ホーロー鍋、土鍋、ステンレス鍋に従来の圧力鍋など選択の幅が広がっています。

玄米は炊き方ですから、本書はこの部分について丁寧に解説してあります。そして、玄米食のためのメニューは豊富に掲載してあり、今まで家庭の主婦が普段から作っているようなメニューが数多くありますから、気軽に取り組めます。食材も野菜のほかに魚介類、鶏肉なども使います。

マクロビォティックや菜食主義で食べたいなら魚介類、肉類は代用品に替える柔軟性もあり、和・洋・中華のほかに日持ちがして毎日食べられる漬物、佃煮、炒めものなどの常備食も。本書でマスターすれば、他の料理本でさらに守備範囲を広げることも可能です。また、本格的な玄米食は少量で栄養的に充分あり、食生活のコストを大幅に低下することが可能です。玄米食の入門書としてわかりやすい本です。


★著者・前田 さやか
1973年福岡県生まれ、同志社女子大学短期大学部卒業。会社勤めをしながら
食と健康のつながりに興味を持ち、マクロビオティック・クッキングスクールに
学ぶ。現在は、Whole Food Studio にインストラクターとして参加のほか、杉並区
の自宅で料理教室 Mitten を主宰。


★定価、 1,500円(+税) 発行・アスペクト

医食同源お薦めの本-63「人間の覚悟」

book-ningenkakugo-400.jpg

『門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし』と詠んだ一休禅師だが、門松のとれぬうちに読む何冊かの本のうちの一冊が本書だった。最近の著者は小説より人生論的エッセイが多いのだが「覚悟」の内容はどんな事なのだろうかという事に興味を抱いた。

著者は、終戦を中学一年生のとき現在の北朝鮮・平壌で迎えた。当時の日本人は最後まで日本が勝つと信じていた。「治安は維持される。日本人市民はそのまま現地にとどまるように」というラジオを信じているうちに、日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、火事場泥棒みたいに進駐してきたソ連軍は、略奪、強奪、殺戮の限りを尽くして日本の居留民を蹂躙した。母親もその犠牲者の一人だったという。

どんな人にも国を愛し、故郷を懐かしむ気持ちはある。けれど、国を愛することと、国家を信用することは別物。「国に頼らない」という覚悟を決める、という序文からこの著者は「覚悟」について説き始める。

著者は人間の一生を登山にみたて、登山は登るだけでなく下山を含めて登山が完成するのだから、下山の哲学をしっかり持たねばならない。人生の後半は男女・夫婦にしても家庭をもつということの意味は半ばそこにあるという。

健康についても同じこと、マスコミ等で健康について関心の高さがうかがえるが、たとえば体に良い食品とか、サプリメントとか、玄米とか、これひとつで体によいなどいう事は決してない。人は一人一人皆違うし、「複雑系」なのだから、医療にしても西洋医学だけで病気が治るわけではない。100%の安心・安全が何かによって保障されることなどあり得ないと覚悟すべき・・・等々、人生のいろいろな場面での「覚悟」のつけ方、日本的にいえば「腹のくくり方」が述べられています。

いつの時代でもそうだが、特にこれからは百年に一度といわれる大恐慌の時代が幕開けしたばかりですから、思いがけない現象がハイスピードで世の中が移り変わって行くと考えられます。陰陽論でいえば「移り変わり」は当然のことですが、人間は「未知との遭遇」したとき、うろたえる人がほとんどです。そうならない為にも、「備えあれば憂いなし」いろいろな覚悟は普段から腹に納めておいたほうがよいと思います。そこで、どう対処したらよいかという点で迷ったときに一読する本としてお薦めいたします。


★著者・五木寛之
昭和7年福岡県生まれ、早稲田大学中退後、編集者、ルポライターを経て
『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞。『青春の門 筑豊編』で吉川英治文学賞。
主な著書に『風に吹かれて』『朱鷺の墓』『戒厳令の夜』『大河の一滴』ほか。


★定価、 680円(+税) 発行・新潮社

医食同源お薦めの本-62「娘につたえる私の味」

book-musume.jpg

本書は、昭和44年、料理研究家の辰巳浜子さんが著した家庭料理書『娘に伝える私の味』を40年後のいま、娘の辰巳芳子さんが日本の家庭料理書として筆を加え、「新版 娘に伝える私の味」として復刻したものです。


現在はどこの家庭でも、加工食品や外食が増え、主婦が料理を作る機会が減っています。しかし、食事の基本は主婦が手作りで料理を作ることにあります。また、日本の家庭料理は、長い時間をかけて作り上げてきた献立が季節に応じて食卓に上がるのが当然でした。作る機会が減れば、簡単な料理を作れない主婦が増えるのも当然です。

40年前は、経済の高度成長加速時代とはいえ、一部にグルメブームがありましたが、現在ほど外食や加工食品だらけということはありませんでした。このところ加工食品、輸入食品の安全性に問題が発覚、外食にしても一見安いけれど食材に安心できないことが露顕してしまいました。

加えて現在進行中、先行きどこまで大不況が長引くのか、不安な時代に入りましたから、家庭料理のほうが結局コストが安くて美味しいものが出来るという風潮が出てきました。そんな時、初心者でも日本の伝統的な家庭料理の基礎から、四季のお献立まできれいな写真つき、分かりやすい解説つきで著した本書は時機を得たものと思います。

お正月から十二月まで毎月の旬の素材を使った献立と料理レシピ、煮物、焼き物、汁物、揚げ物、鍋物、あえ物、漬物、寿司、雑煮、お粥など、基本から確り説明していますから、若い方でも理解できます。

母・辰巳浜子(料理研究家)さんは、NHKテレビ「きょうの料理」初期の草分け的講師でした。娘・辰巳芳子さんは、鎌倉で料理教室を主宰しているが、定員は少数精鋭主義のため受講希望の生徒さんが多くて、2~3年空席待ちという。本欄でも3年前に著書を紹介したことがある。

『あなたのために・いのちを支えるスープ』

普遍的な日本の家庭料理だから、食養生の料理みたいに動物性(肉、卵、魚)はダメということがなく、和の献立を中心に洋の献立も混じって、尚且つ新しく加えた注釈を読むと、一層理解がしやすい。確かに日本中の家庭に一冊備えておきたいと思わせるに充分な内容である。


★著者・辰巳浜子
明治37年生まれ、昭和52年没。料理研究家として活躍。
著書『手しおにかけた私の料理』(婦人之友社)『料理歳時記』(中央公論社)
『みその本』(共著・柴田書店)ほか。

★著者・辰巳芳子
大正13年東京生まれ、聖心女子学院卒業。
鎌倉の自宅で「スープの会」を主宰。
NPO法人「良い食材を伝える会」会長。
『辰巳芳子の旬を味わう』『辰巳芳子 慎みを食卓に』(共にNHK出版)
『あなたのために』『家庭料理のすがた』(共に文化出版局)他。

★定価、 3,800円(+税) 発行・文芸春秋社

医食同源お薦めの本-61「七日市藩和蘭薬記」

book-nanokaitihan-400.jpg

どんな時代でも平穏無事な期間はそう長くはないものだが、300年近く続いた江戸時代も後期になると波乱の時代を迎える。高視聴率を博したNHKの大河ドラマ『篤姫』も、そんな時代背景と今まで余り知られていなかった人物像の意外性が興味をひきつけたのではと考えられる。以前、「百七十余年、伝統を受け継ぐ地方醸造家の変遷史・キパワーソルト醤油物語」を紹介したことがあった。

『キパワーソルト醤油物語』ダウンロードはこちらから

そのとき感じたのは、長い間の鎖国で国外の情報には暗かったのでは考えられるのに、意外なほど武士、商人、百姓が海外の事情に通じ、勉学意欲に盛んな人々が大勢いたということであった。

本書は、その時代唯一外国との窓口であった長崎出島の和蘭(オランダ)商館経由で入って来た医学や薬学の情報がどのような人々によって国内に流れて行ったか、ということが一つの軸になっている。

それは一つの背景であって、舞台は意外にも上州・七日市藩(現在の群馬県富岡市七日市)が主役となっているところに興味を引かれて一気に読むこととなった。まして七日市藩が、金沢の加賀百万石大名・前田家の支藩(いわゆる飛び領)であったことを同じ群馬に住みながら初めて知った。

一万石の小大名でありながら、その特異性ゆえに江戸幕府の隠密(情報機関)や和蘭(オランダ)薬の調合をめぐって薩摩藩(鹿児島)島津家の間者(スパイ)との暗闘などに至る経緯は、当時の各藩が財政収入をあげるため、米以外の換金しやすくしかも利益の大きな産物を探求していたことにある。

この小説の主人公は、加賀前田藩士で飛び地の七日市藩・薬事奉行に任ぜられた宮脇一之丞と息子・一馬で、加賀から京都、長崎、江戸、上州と物語は繰り広げられる。フィクションといっても作者は工学部出身者らしい史実・史料に丁寧な考証を加え、当時の時代背景描写は正鵠を射ている。

当時、オランダ商館の蘭館医・シーボルトが禁制品の「日本地図」を持ち出そうとして発覚した大疑獄事件があった。それに連座した江戸幕府高官、長崎の有能なオランダ語通訳、使い走りに至るまで数十人が死罪ほかの厳罰に処せられた大事件であった。

当時の日本人の海外事情など、知識欲につけ込み和蘭薬と交換条件で禁制の地図を入手したと思われるが、西欧人の目からみれば日本は「黄金の国・ジパング」であり、工芸品ばかりでなく持ち出し禁止の豊富な薬草(和漢薬)を採集させて本国へ送り、詳細な報告書まで提出していた。

四季があり植物の種類が豊富な日本では当たり前と思えることが、異国人にしてみれば大変な情報価値があったに違いない。いま現在でも、いつの間にかアメリカ産の「コシヒカリ」「アキタコマチ」が日本のマーケットに侵入しつつある。札幌農学校のクラーク博士が持ち帰った大豆は、いまやアメリカ農産物では世界一のシェアーを占め、日本では大豆の殆どをアメリカに頼っている始末。「灯台もと暗し」自国にあるものの価値を分らず外国との情報戦で負けているのは、当時と昔から変わっていない感じがする。

お正月など、ちょっとお暇のある時に幕末という激動の時代を生きた群像を面白く読める一冊ではないかと思います。



●『七日市藩和蘭薬記』
★著者・たなか踏基
山形県山形市生まれ。新潟大学工学部応用化学科卒業。
日本火薬㈱で化学技術専門職。『雪』で京都大学新聞社懸賞小説入選。
著書に『進化する化学技術』『奇妙な喫茶店』(文芸社)『奇妙な猫たち』(文芸社)
『奇妙な受精卵』(幻冬舎ルネッサンス)等の小説を発表。
★定価、 1,500円(+税) 発行・幻冬舎ルネッサンス