『奇跡のリンゴ』
2006年にNHKテレビのドキュメンタリー番組「プロフェショナル仕事の流儀」で放映され、大きな反響を呼んだ青森県のリンゴ農家・木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」を著者が周辺取材し、構成、書き下ろしたものです。
青森は、リンゴとお米が生産品目の大部分を占めている。それだけに戦後、農協主導による化学肥料、農薬で長年取り組んできた。ところが、近年そのシステムによる枠組みが農法としても、農政的にも破綻を来して行き詰まって来たことは明らかである。消費者の食品に対する安全・安心の意識も変化してきているが、従来からあった自然農法というジャンルも、内容は幅広く取り組み方もいろいろである。
自然農法というと『わら一本の革命』の福岡正信先生を思い出す。不耕起・不除草・不施肥など独特の哲学で、ある意味ほったらかし流の自然農法を実践し、自然農法のあり方に一石を投じた意義は大きい。近所の自然食品店から季節になると「福岡みかん」を毎年購入していたが、外見でけではどう見ても茶色ががった少し干からびたようなみかんは、相当作物に対する深い認識と意識がないと普通の消費者でみてくれで敬遠してしまうのではないかと思えた。もちろん食べれば、まろやかな糖度で自然のうま味と日持ちのよさが抜群であったことはいうまでもない。
福岡正信先生は、気候も温暖な四国であったことが好い条件に恵まれた点があるが、青森という冬は厳寒の地で「農薬も肥料もつかわず、たわわにリンゴを実らせる」という木村秋則さんの自然農法は、完成するまで30年近くかかっている。その間、苦心、苦労は、筆舌につくせないという表現がぴったりの時間ではなかったろうかと思える。しかし、このテの人の感覚は苦労が苦労と思わないところが常人と違うところだが、現実は厳しく極貧の時は昼間の農作業が終わると、夜は街のクラブやキャバレーの便所掃除、雑役などのアルバイトで子供たちの学費を払ったという。
木村さんの自然農法は、徹底的に長い時間をかけて害虫の生態、益虫の生態、雑草、雑木、林相など自然観察からたどりついたという。虫の生態についても「ファーブルの昆虫記」にも書いてない、大学の研究室の先生も知らないような未知の生態を実によく見極めていったという。そこから導き出された自然農法は、温暖地、寒冷地に限らず、また、果樹、稲作に限らず幅広く応用できるところに大変な価値がある。
NHKテレビのドキュメンタリー番組で放送される以前から、北海道、埼玉、栃木、茨城等で「木村自然農法」を導入した農家がどんどん増えているそうです。さらには、外国では韓国が熱心に木村自然農法を学んでいて、アフリカ等の農地が砂漠化している国から注目をあびているとのこと。砂漠化は、化学肥料、農薬を長年使用した国内の農地でも広がりつつあり、農家の若い後継者が「木村自然農法」をまなんでいるという。
自然農法としてもまだマイナーな存在であり、知名度もいまだしという感じであるが、国基準の有機農法とも違うし、単なる有機無農薬農法とも似て非なるこの農法が日本の農家に普及したら、いままで農家の所得が増えない原因のコストが大幅に低下することは間違いない。今は、木村さんのリンゴを入手するには希望者が多く、入手困難らしいが、同じ農法の作物を消費者がもっと消費拡大して共存を図ることが今後の課題ではなかろうか。
★著者・石川 拓治
1961年茨城県水戸市に生まれ。早稲田大学法学部を卒業。
編集プロダクション勤務を経て1988年フリーランスライターに。
◆主な著書
『ぼくたちはどこから来たの?』(マガジンハウス刊)、『あきらめたから生きられた』(小学館刊)、『国会議員村長』(小学館刊)
◆構成した書籍
『三流』長島一茂著(幻冬舎刊)、『胸懐』TAKURO著(幻冬舎刊)、『Bボーイサラリーマン』HIRO著(幻冬舎刊)、『哲学』島田紳助・松本人志著(幻冬舎刊)、『全思考』北野武著(幻冬舎刊)、『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』島田紳助著(幻冬舎新書)、『成功の哲学』三木谷浩史著(幻冬舎刊)、『男道』清原和博著(幻冬舎刊)
★定価、 1,300円(+税) 発行・幻冬社
