『みその本、みその料理』
年をとったせいか近頃やけに味噌汁の旨さを感じることが多い。麹と大豆のアミノ酸のうまみと甘さを舌で感じ、鰹節や昆布の入り交じった出汁の馥郁(ふくいく)たる香りが鼻をつくと、それはまさに日本の食卓そのものである。
どこの国でも食べ物の伝統は、短い期間で一朝一夕にできるものではない。味噌ひとつとっても、長い歴史と伝統の中で育まれ、れんめんと食生活の中で受け継がれてきたことがわかる。特に「味噌汁」は「おふくろの味」として記憶している人が多く、代表的な食べ物であることに異を唱える人はいないでしょう。
ところが、最近「味噌汁」など食事で口にしたこともないし、テレビ広告のインスタント味噌汁がせいぜいという若者も多いという。味噌の原料・大豆は、もともと100%近くあった自給率が現在は5%といわれている。最近、政治の世界でも「食料自給率改善」をとなえる政治家や政党も目につくが、味噌以外にも大豆製品・納豆や豆腐などがほとんど輸入大豆であることに、国民の目を向けさせ、改善する意識革命が必要ではないだろうか。
本書は、料理研究家・辰巳芳子さんが、母親の浜子さん二代にわたって「味噌汁」だけでなく味噌料理の基本から応用まで長年のノウハウを公開した味噌について何でもわかる初心者に好適であり、ベテランにも参考になる名著です。
味噌は「味噌汁」だけでなく「あえもの」「焼き物」「煮物」「なべもの」「練りみそ」など、実に多岐にわたっています。料理はどんなものでも、余りもの、半端が出るものですが、それらについても懇切丁寧に現代生活に生かす味噌料理として解説されています。
日本の食文化の担い手である「お米」と双璧をなす「味噌」について、ほんものの味噌のおいしさを味わう、きっかけや、他国の料理ではわからないウマ味について感性を磨いて頂きたい思うのです。ぜひ若い女性や若い主婦に必携、必読して頂きたい一冊です。
★著者・辰巳浜子
明治37年生まれ、昭和52年没。料理研究家として活躍。
著書『手しおにかけた私の料理』(婦人之友社)『料理歳時記』(中央公論社)
『みその本』(共著・柴田書店)ほか。
★編者・辰巳芳子
大正13年東京生まれ、聖心女子学院卒業。
鎌倉の自宅で「スープの会」を主宰。
NPO法人「良い食材を伝える会」会長。
『辰巳芳子の旬を味わう』『辰巳芳子 慎みを食卓に』(共にNHK出版)
『あなたのために』『家庭料理のすがた』(共に文化出版局)他。
★定価、 1,600円(+税) 発行・文化出版局
