『塩の文明誌』
塩について料理や健康問題、医学的なことについて書かれた本は数知れず多いけれど、環境学の専門の研究者が塩をテーマに書いた本はきわめて少なく非常に珍しい。
総合地球環境学といういささか固い感じのする研究者の共著であるが、内容はとてもやさしく、わかりやすく書かれている。「塩の文明誌」という書名であるが、内容は多岐にわたり、塩と料理の関係も一般の料理書とは違う視点から書かれていて興味深い。健康面でも塩の過剰摂取の害は認めながらも「減塩」や「塩分控えめ」の風潮には批判的であり、医学的な観点からも極端な減塩には否定的である。
本題の塩について、まず塩とは何かから始まり、人類と塩とのつきあいから始まる歴史、農耕民族と狩猟民族の塩に対するつきあい方、考え方の違いから、塩のもつ二面性にも言及する。自然環境と塩の関係については、研究者の専門領域であるだけに、うんちくについては深みが あり、塩が地球環境と密接なつながりがあることを納得させてくれる。
塩は人類の文明が始まって以来、よきにつけ悪しきにつけ、その盛衰に深く関わってきた物質であり、そのつきあい方によっては環境的にも「混ぜればゴミ、わければ資源」という両面性があるという。
「食べる」ということ以外に、これほど塩は多面的な物質であることを改めて知ることができる好著といえるでしょう。
★著者・佐藤洋一郎(さとうよういちろう)
1952年、和歌山県生まれ。京都大学院農学研究科修士課程修了。総合地球環境学究所教授。専門は植物遺伝学。
★著者・渡邊紹裕(わたなべつぎひろ)
1953年、栃木県生まれ。京都大学院農学研究科単位取得後退学。総合地球環境学究所教授。専門は農業土木。
著書『水をめぐる人と自然』(有斐閣)『地球温暖化と農業』(編著、昭和堂)ほか。
★定価、920円(+税) 発行・日本放送出版協会
