『日本のお米、日本のご飯』
世界中どこの国でも「主食」という長い伝統につちかわれた食べ物を中心に毎日の食生活が営まれている。その主食は、その国にとって一番気候風土に合った食べ物であり、食べる人の体質に適合したものであり、長い年月にわたり祖先からの智恵が込められ栽培法も数々のノウハウが伝えられている。
だからどこの国でも主食の需要が減ることはないし、まして交替することはあり得ない。ところが、戦後一貫してわが国では主食である「お米」の消費が減り、しかも食糧の輸入が増えて自給率が先進国最低の国となってしまった。食べ物が店頭にはあふれ、一見豊かそうに見えるが、食べ物に対する考え方が「命をはぐくむ大切なもの」から、「食欲を満たすだけのエサ」という風に考える人が増えているのではないだろうか。
政府は最近になって『食育』を提唱し、自給率の向上を言い始めたが、国民の関心はそう高いように見えない。しかし、以前より『食』に対する意識は徐々にではあるが変化の兆しも出てきている。本書のような『お米、ご飯』に対する啓蒙書が発刊されたのは、今ここで何とかしなければという無意識の領域で衝動が書かせたものではないかと思える。
一般家庭での「お米」が持っている意味、取り扱い方、料理法、取り扱い方、お米を造り出す日本の気候風土の美しさ等々、数多くの写真と説明で、「お米」とは、これほど多様多彩な食べ物であったかを、いまさら思い知らされる。
普段、お米は「ご飯」に炊いて、副食で食べるという思い込みがあるが、本書には「お米の研ぎ方」「洗い米」「水加減」から始まり、塩むすびから焼きむすび、季節のまぜご飯、どんぶりもの、寿司(和風、洋風)、お弁当、お粥シリーズ、茶漬け、チャーハンなど中華や洋風に至るまで、お米料理の多彩さを再発見することでしょう。
これ一冊あれば、季節を問わず、副食をいろいろ考えることもなく、そのご飯に合った副食の作り方も添えてあるから、いろいろなバュリエーションを楽しめるとと共に、日本の「米文化」の奥深さに改めて知ることになります。もちろん、日本中どこでも利用できる食材を使っての料理ですから、各地方の独特の「米文化」が残っている料理を含めれば、本書の何倍にもなるでしょう。
日本の「米文化」の凄さを見直す機会として、ぜひ若い女性や若い主婦に必携、必読して頂きたい一冊です。
★著者・土井善晴(どいよしはる)
1957年大阪市生まれ。料理研究家「おいしいもの研究所」主宰。
スイス、フランス で西洋料理を学んだが、大阪の「味吉兆」で日本料理を修。 料理研究家の父、土井勝の遺志を継ぎ、「清く正しくおいしい日本の家庭料理」を提案する。テレビ、雑誌、レストランのメニュー開発など幅広く活躍。
『日本の家庭料理独習書』(高橋書店)、『土井家の一生もん2品献立』(講談社)など著書多数。この『日本のお米、日本のご飯』は、日本の主食であるお米の素晴らしさと、それを大切にしてきた私たちの祖先の思いを伝えたい、という趣旨で自身が企画した本。
★定価、1,800円(+税) 発行・講談社
