『娘につたえる私の味』
本書は、昭和44年、料理研究家の辰巳浜子さんが著した家庭料理書『娘に伝える私の味』を40年後のいま、娘の辰巳芳子さんが日本の家庭料理書として筆を加え、「新版 娘に伝える私の味」として復刻したものです。
現在はどこの家庭でも、加工食品や外食が増え、主婦が料理を作る機会が減っています。しかし、食事の基本は主婦が手作りで料理を作ることにあります。また、日本の家庭料理は、長い時間をかけて作り上げてきた献立が季節に応じて食卓に上がるのが当然でした。作る機会が減れば、簡単な料理を作れない主婦が増えるのも当然です。
40年前は、経済の高度成長加速時代とはいえ、一部にグルメブームがありましたが、現在ほど外食や加工食品だらけということはありませんでした。このところ加工食品、輸入食品の安全性に問題が発覚、外食にしても一見安いけれど食材に安心できないことが露顕してしまいました。
加えて現在進行中、先行きどこまで大不況が長引くのか、不安な時代に入りましたから、家庭料理のほうが結局コストが安くて美味しいものが出来るという風潮が出てきました。そんな時、初心者でも日本の伝統的な家庭料理の基礎から、四季のお献立まできれいな写真つき、分かりやすい解説つきで著した本書は時機を得たものと思います。
お正月から十二月まで毎月の旬の素材を使った献立と料理レシピ、煮物、焼き物、汁物、揚げ物、鍋物、あえ物、漬物、寿司、雑煮、お粥など、基本から確り説明していますから、若い方でも理解できます。
母・辰巳浜子(料理研究家)さんは、NHKテレビ「きょうの料理」初期の草分け的講師でした。娘・辰巳芳子さんは、鎌倉で料理教室を主宰しているが、定員は少数精鋭主義のため受講希望の生徒さんが多くて、2~3年空席待ちという。本欄でも3年前に著書を紹介したことがある。
普遍的な日本の家庭料理だから、食養生の料理みたいに動物性(肉、卵、魚)はダメということがなく、和の献立を中心に洋の献立も混じって、尚且つ新しく加えた注釈を読むと、一層理解がしやすい。確かに日本中の家庭に一冊備えておきたいと思わせるに充分な内容である。
★著者・辰巳浜子
明治37年生まれ、昭和52年没。料理研究家として活躍。
著書『手しおにかけた私の料理』(婦人之友社)『料理歳時記』(中央公論社)
『みその本』(共著・柴田書店)ほか。
★著者・辰巳芳子
大正13年東京生まれ、聖心女子学院卒業。
鎌倉の自宅で「スープの会」を主宰。
NPO法人「良い食材を伝える会」会長。
『辰巳芳子の旬を味わう』『辰巳芳子 慎みを食卓に』(共にNHK出版)
『あなたのために』『家庭料理のすがた』(共に文化出版局)他。
★定価、 3,800円(+税) 発行・文芸春秋社
