『食べ方上手だった日本人』 【 お勧めの本 】
近年食料自給率が低くなり、加工食品が食卓に多く上るようになってからのほうが、ワンパターンの副食や決まりきった味で、食事が貧しくなったような気がする。戦前の「ご飯」というと、何か貧乏くさいと思われがちだが、本書は昭和10年ころの食生活を当時の雑誌などの資料から検証。質素だか工夫があって美味い、低カロリーで体にも良いという、当時の食生活を浮き彫りにして、現代に活かせる智恵を再発見。
当時の雑誌や料理本を見ると、現代の書籍のように文章が柔らかくなり、分量も数値化され、イラストも多く、今日の料理本スタイルの原点となっているという。今から70年前のレシピながら実際に著者が試作してみると、けっこうモダンな「和洋中」で、戦争末期の「ひもじい」イメージも全くなし。
今の料理との大きな違いは、動物性タンパク質と油脂量の摂取がずっと少なくメタボとも縁遠い。むしろ、冷蔵庫なども庶民には高嶺の花だった時代、食品の保存方法も現代の主婦よりずっと智恵を絞り、工夫していた。現代は当たり前として使っている台所道具や熱源がいろいろ出始めた時期でもあり、非電化のエコな道具まであったから、これからの時代にむしろ役立つかも知れない。
また、「買い物上手の心得」も当時発刊された辞典にあり、賞味期限などに惑わされることもなく、自分流のモノサシで食品を選ぶことが身につく。人口増加で今までのように食料輸入がお金だけでは解決出来ない時代、環境問題、食料不足はますます深刻化して行く見通しである。
今後は「飽食の時代」のように多量に食べ残したり、無駄にしたりということは出来なくなると予想される。昭和の初め、当時のように少ない食べ物を大切に工夫して、内容豊に暮らす智恵が要求されると思います。戦後生まれで、食べ物が豊な時代しか知らない人々にとってはかえって斬新な暮らしに見えるかも知れない。特に若い主婦層に役立てて頂きたい一冊ではある。
●『食べ方上手だった日本人』
★著者・魚柄仁之助
食文化研究家・『うおつか流大人の食育』(合同出版)、『うおつか流台所リストラ術』
(農文協)、『1人前100円なんで美味いの?』(徳間文庫)、 『知恵のある 和の家 和の食 和の暮らし』(主婦と生活社)、『うおつか流 みんなで体験!台所塾』(合同出版)、 『おかわり飯蔵』(ドラマ原 作)等多数。
★定価、 1,800円(+税) 発行・岩波書店
