『もったいない』
2004年ノーベル平和賞受賞者で、ケニア共和国環境副大臣のワンガリ・マータイさんが日本でみつけた言葉「もったいない」という、最近とんとお目にかかることの少なくなった事を再発見、再発掘した本です。ワンガリ・マータイさんが環境問題に取り組んでいる合言葉に「3R・リデュース・リユース、リサイクル」があるそうです。この三つの言葉をたった一言で言い表した「もったいない」という言葉に出会ったとき、世界へのメッセッージとして大事な言葉と感じたそうです。
「もったいない」という言葉は、以前の日本人にとっては「日常茶飯事的」な言葉であり、態度でした。
私の世代でも、ご飯どきには、明治生まれの父親から、「ご飯はお百姓さんが汗水流し、苦労して作ったものだ。もったいないから一粒たりとも残してはならん」と、小言の定番として、毎度毎度、耳にタコが出来るくらい聞かされたものです。戦中、 戦後の時代、物不足でしたから、その言葉はあらゆる事に適応され、自然と身につき、今でもお茶椀のご飯粒は一粒残さず、副食もきれに食べる習慣が身についています。もちろん、年齢に従って残さず食べられる量に、腹八分目に調節しています。
『「もったいない」の表側は、物的損失を惜しむ気持ちです。いっぽう、その裏側では、失ったものを手にしたり、完成させたり、そこにたどり着いたりするまでの「形には表れない大切なもの」に馳せる感謝の気持ちと、それを無にしてしまった嘆きとが、一体となって、日本人独特の精神世界を形作っています』というワンガリ・マータイさんの言葉は、近頃の日本人が忘れていた精神(こころ)そのものです。
それは、かつては日常茶飯事であった日本人の暮らしの智恵に対する畏敬の念でもあり、同時に現代日本の文明に対する警鐘でもあります。
本書に書かれている暮らしの智恵のいくつかは、江戸時代がルーツである暮らしの智恵が紹介されていることに気づきます。 風呂敷のマルチな用途の広さ、応用の多用さはもっと見直したいものです。アロハのルーツが日本の浴衣(ゆかた)とは思いもよりませんでした。 ゴミの収拾システムは江戸に学べであり、割れた茶碗やお皿も「焼繼ぎ屋」さんによってリユースされました。もったいないの精神の技術がどんどん消えて行くのは、惜しい事です。
世界で一番食べ残しを廃棄処分している日本、一方では飢餓に苦しむアフリカなど途上国の人々がいます。地球上の資源は限られ、21世紀は水資源の分配が大きなテーマになろうとしています。毎日の暮らしの中で、「もったいない」のこころを再発掘しないと、日本沈没の日が来ないとも限らないと杞憂するのは年のせいだけとは思えません。多くの人にお読み頂き、気づきの一冊となればと思う次第です。
発行・マガジンハウス 952円(税別)
