『日本は世界5位の農業大国』
本の表題を見て『本当かな?』と思う人が少なからずいるのではないかと思います。今で私たちの頭の中に刷り込まれてきたのは「日本は先進国中最低の食料自給率」というキャッチフレーズが長年農水省をはじめとしたマスコミの情報によってもたらされて来ました。
私事ではありますが、時々デパ゚地下やスーパーへ買い物に行くと、確かに以前より輸入食品もいろいろ販売されていますが、国産比率39~41パーセントという数字はどうも実態とかけ離れている印象があります。本書の執筆意図「大嘘だらけの食料自給率」ということの内容については「自給率が示す数字と一般的な感覚がかけ離れているのは、農水省が意図的に自給率を低く見せて、国民に食に対する危機感を抱かせようとしているからである」という。
なぜかというと・・・。「窮乏する農家、飢える国民のイメージを演出し続ければならないほど、農水省の仕事がなくなっているからだ。・・・いかにして農水省や天下り先の利益を確保するかという保身的な省益だけの考え方で農業政策を取り仕切っているからである。農水省幹部の頭には、国民の食を守るという使命感などまるでない」という趣旨にもとづいて細かく分析、さまざまな矛盾を暴いている。
農業という国の基幹産業の実態を知るための統計、なかんずく食料自給率をはかるモノサシが「カロリーベース」を用いているのは、世界でも日本だけという。普通はいくつかの統計(モノサシ)を組み合わせて、状況や実態を知るのが常識である。体を病気でないかどうかを診断するモノサシ(検査法)が何種類もあるのも常識である。普通、公式な自給率は「生産額ベース」が世界でも一般的な指標だという。ところが日本の農水省は、採用もせず、他国のデータも集めていないという。
それにしても国民や農家は長い間「カロリーベース」というモノサシで、食料自給率は先進国中最低という魔法にかけられて来たわけだが、農水省はなぜそれを基準に日本の農政をすすめてきたのであろうか。それは、すべて農水省の省益のためであり、日本の農業の実態を表したものではないという。本書は、各種のデータをもとに日本農業の実力と、将来性や、今までの国民や農家だまし数々のテクニックを詳細に示している。今までの何となくもやもやしたものが、霧が晴れるようにすっきりして来た感じはあるが、もっと他のジャーナリストや研究者のさまざまな角度から見た発表が待たれる。
農業専門のジャーナリストとして深く観察・研究してきた著者でなければ、この分野での豊富な内容は書けなかったであろうと感じる。一般人の教養書としても、これから農業に参入したり、勉強しようと思う方にとっても「目からウロコ」の項目が多く、参照・参考に値する一書である。
●『日本は世界5位の農業大国』
★著者・浅川 芳裕
1974年山口県生まれ。エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。ソニーガルフ(ドバイ)を経て農業技術通信社入社。若者向け農業誌「Agrizm」発行人。ジャガイモ専門誌「ポテカル」編集長。月間「農業経営者」副編集長。
★定価 838円(+税) 発行・講談社+アルファ新書
