東洋医学(鍼灸・気功・食養・漢方薬)臨床経験30年の筆者の体験をもとに、毎日を健康に暮らすための、お役立ち情報をお伝えいたします。

医食同源お薦めの本-49 台所重宝記

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「お勝手」とか「台所」という言葉が日常的に使われなくなっているが、また「重宝」(ちょうほう)という言葉も同様に思える。重宝するとは、情報を便利に役立てることだが、本書は明治38年の初版であるから102年前に刊行されている。著者の村井弦斎は当時の報知新聞(読売新聞の前身)に連載小説を書いていた明治大正時代のベストセラー作家である。百年以上前の著作物にもかかわらず『温故知新』(古きをたずねて新しきを知る)という「食」に関する知識と智恵の豊富な内容で、啓蒙的な読み物である。

現在の主婦で、当時の食に関する知識や鑑識眼を常識として知っていた主婦に匹敵する人がどれくらいいるだろうか。現代の食生活は加工食品などは指で袋の封を切ればすぐ食べられるから味気ないものになっているが、食べ物の知識があれば、そこへ一工夫加えて食べると美味しく食べられる。

例えばご飯を炊くにしても、いまはマイコン付の炊飯器で炊けば誰でも同じに出来ると考えられるが、お米の見分け方、つまり古米、新米、米粒の大小、撞き方の違い、お米の研ぎ方の違い、水の分量割合などを勘案して炊けば全く違う味に炊ける。炊飯器のマニュアルは、標準的な炊き方であるから、お米の見分け方を知って炊飯器にかければ炊きあがりも違うのは道理である。

本書は、漬物のこと、味噌、醤油、酢、みりんなどの調味料の良し悪しの見分け方、野菜、果物、卵、肉・魚などの良否の鑑別法、魚の匂いなど、これを知っていたなら主婦として一人前であり、主婦としてプロであると思う。いまは庖丁、まな板がなくてもデリカでお惣菜が売られ、袋入りの加工食品を買えば済ませられる時代だけに尚更である。

本書は、食べ物だけでなく暮らしに必要な知識、料理道具のこと、衣類の染み抜き、掃除、洗濯のこと、食べ物と体の仕組み、料理暦(旬の食べ物、食べ方)など、人の暮らし全般にわたっている。もちろん時代の違いによって現在では使われない道具の知識などもあるが、それに数倍するお役立ち情報が満載である。また、主婦に限らず一般の人が読んでも面白い実用的な教養書といえる。


★『台所重宝記』----村井米子 編訳----

★著者・村井弦斎
1863~1927年、三河の国(愛知県豊橋市)に生まれ、東京外国語学校ロシア科中退。ロシア、アメリカに渡り、帰国後小説を書き、新聞連載小説で大ベストセラー作家となる。
★売価・ 1,200円(+税) 発刊・平凡社

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