医食同源お薦めの本-47 あと3年で世界は江戸になる!

もと銀行マンでもあり、経済学の専門家である筆者が、日本という視点から近未来を考え、世界が平和と共生の時代を進まねばならないとき「江戸時代」というすごい社会モデルがあったというお話。
戦後、日本人はGHQ(連合国軍総司令部)の教育方針に従って「祖国に対する誇りを失う」よう洗脳された。つまり、戦前の日本は軍国主義、帝国主義の侵略国家であり、その前の江戸時代は封建制度で身分制度の厳しい庶民が虐げられた時代」と日本史観を刷り込まれた。
私の年代でも歴史教育の中で、江戸時代は、士農工商の身分にがんじがらめにされ、封建制の真っ暗な時代と教えられた。鎖国政策によって海外の貿易を禁じ、西洋の新しい文物や情報が入らず、それで江戸時代は西洋の文明に後れをとったと刷り込まれた。
ところが後年、いろいろな事を知るうちにどうもそれはおかしいと感じるようになった。少年時代の読み物は、野村胡堂の「銭形平次捕り物控」であり「人形佐七捕り物帳」であった。後年、池波正太郎の「鬼平犯科帳」や「必殺仕掛け人」「剣客商売」を愛読し、江戸時代の庶民の生きざまを読んだときに感じたことであった。考えてみれば、当時の日本は人口3千万人で、一地域にまとまった国としては世界一であり、江戸の人口100万人は、当時のロンドンやパリ(50万人)をしのいでいる。
しかも、食料は自給して、石化燃料を使わないから公害など知らない、そして全くムダのないリサイクル社会であった。江戸という街に100万人が住み、水不足もなく、ゴミのない街で、「子どもたちは男女・貧富をとわず学校(寺子屋)で読み書きを学んでいる」と幕末頃来日した、イギリス、ロシアの外国人が書き残している。日本に開国を迫ったアメリカのペリー提督でさえ「書物が店頭に並べられ、人民は一般に読み方を教えられている」と、本国に報告している。
江戸時代の識字率は、日本全体で50%と推定され、世界でもスウエーデンやドイツの一地方とともに、トップクラスだった。江戸時代初期、数学では吉田光由の『塵劫記』(じんこうき)に、数の読み方が定められている。それまでは一、十、百、千、万、億、兆、京、と10倍ごとに桁が変わっていた。新しい桁名を覚えるわずらわしさを正し、万から先は十万、百万、千万など入れ、4桁毎に換える方式にした。世界一すぐれた数の読み方はこの本で確立されたという。しかも、大ベストセラーとなり読まれたというから、それまでの世界でもなかった現象である。
本書は、江戸時代を400年前に出現した「超先端国家」と評する。それは、江戸時代に創造され、流行した文化が脈々と受け継がれ、しかもそれが世界に向けて発信され、受け入れられている事実がある。今や「寿司」「天ぷら」「とうふ」「醤油」などは、世界中に普及してきている。「俳句」「川柳」「浮世絵」などが愛好され、歌舞伎や文楽など欧州やアメリカで高い評価を受けている。
最近、本屋さんの店頭で「和算」の本が並べられているというが、西欧世界に100年もさきがけ「微分・積分」「円周率」が解かれていたことは、知識水準の高さを証明している。いま高齢化、人口減少、政治・経済の手詰まり感など、逼塞状態にある日本だけでなく、世界に通用する「エドナイゼーション」は、すばらしい社会モデルと事例をあげて列挙する。
戦後、「自虐的歴史観」により自信喪失に陥っている日本人にとって、自分の国の歴史観を見直す、わかりやく、読みやすい好著である。
★『 あと3年で、世界は江戸になる』----新「風流」経済学----
★著者・日下 公人
東京大学経済学部卒、日本長期信用銀行取締役、ソフト化経済センター理事長等を経て、現在日本財団特別顧問
★売価・ 1,400円(+税) 発刊・㈱ビジネス社