食の匠たち-7塩の使い方に新境地・尾島良治さん

尾島さんは戦後、桐生でお父さんが開いた「江戸っ子寿司 を継いだ二代目。
二代目のきついところは親以上の味を創り出していかねばならないことでしょう。それとお寿司屋さんは、近年時代の変遷で、昔のままの営業形態でやっている店がどんどん減っているという厳しい環境にある。回転寿司のような数と廉価志向か、
寿司本来の味で勝負の生き方か、二極志向の様相を呈しているわけです。
そんな中で、尾島さんのコンセプトは、あくまで寿司本来の味と、さらに深化した寿司作りに挑戦し続けている。それだけに修行時代から師匠には、徹底的にタネの鑑別法、見分け方を仕込まれたという。地方の寿司屋さんは良いネタの仕入が大変だが、東京の築地には毎週通ってなじみの仲買店から吟味に吟味を重ねて仕入れて来る。本当は週2回行きたいのだそうだが、往復7~8時間かかるので、週一回の買い付けとなる。
もちろんマグロの鑑別には最近輸入魚が増えているだけに力を入れて勉強しているが、むしろ神経を使って見分けてくるのが季節、旬の小魚類。春や夏にはシンコ、コハダ、アジ、マコガレイ、イナダ、アオリイカ、トリ貝、アワビ、穴子、シャコ、カツオなど、秋や冬にはさサバ、サヨリ、スミイカ、車海老、みる貝、赤貝、マダコ、ハマグリ、ヒラメ、真鯛など。
種類も多く、水揚げ地もさまざまなだけに、旬の味を選ぶには長年のカンと経験が頼り。長い常連のお客様の舌に応えられるには、魚の目利きが繁盛の分かれ目となる。また、帰ってから仕入れたものを丁寧に仕込みにかける時間を費やす。最近は、仕込済みのタネを仕入れてくる寿司屋さんも多いというが、尾島さんは塩の使い方に工夫と研究を進める中で自信をつけて行った。特に本当の通が好むというコハダの塩の振り加減と、酢の締め加減は絶品である。
玉子焼きも修業時代の親方に仕込まれた「東京焼」の味を守り通して焼いているが、一工夫したのがキパワーソルトの使い方、塩加減で日持ちが良いのと、味が一段と良くなったとお客様の評判も上々。最近は、白身の魚を塩味で食べるお客様のリクエストが増えたが、タコも塩味であっさりした塩加減で食べると美味しいと、食通からの注文が多いという。(写真は、白身魚とタコを塩味とスダチをちょっと絞り食べる)
タネの仕込みもさることながら、意外と難しいのがシャリの選別と炊き方。昔から「握り鮨の味は、タネが4分にメシ6分」といわれるほど。それだけに米の産地情報と仕入には気をつかう。鮨飯に最適なのは、寒暖の差が激しい山間部でとれた小粒のお米の方が適している。かえって平野部でとれた大粒の米は柔らかく、温度が冷めたときにべたついてしまうという。鮨飯の炊き方も塩の使い方で随分違うというから、お米が変わる度に、塩加減の使い方を研究し、ノウハウを溜め込んでいるという。
キパワーソルトと塩田の塩で、いろいろな使い勝手を研究している寿司屋さんとしては、いまのところナンバーワンと言えるでしょう。これからも精進を重ね、名人といわれる域に達するよう頑張って頂きたい二代目です。