食の匠たち-5既成概念を打ち破る野菜作り・南雲成次さん。

世間一般の常識からしたら「変人・奇人」という評価が成り立つ。ただ、南雲さんと話をしていると感じるのは、どこかのコマーシャルで言っていたが「目のつけどころが違うでしょ・・」ということにピッタリの御仁である。
南雲さんが農業を営む隣町の隣村であった新里村は、今回隣町を飛び越して私の住んでいる桐生市と合併した珍しい合併例のところにある。だから、南雲さんとの出会いも変わっていた。
5年ほど前、東京・銀座にある「異業種交流会」の席上で、パーティー料理を作りながら、持ち込んで来た野菜をしきりに「生で食べてみてください」という人がいた。奨められるまま、キャベツや人参を生で食べてみたが、シャキッとしていて柔かく、味は今まで食べた有機野菜とは一味ちがうものを感じた。長年、有機野菜を試食していると、使った堆肥の種類がある程度分かるようになる。南雲さんの野菜は、それを感じさせない野菜の素直な味がした。
聞いてみると、近くの新里村というので後日尋ねることを約束して、往来が始まり5年経ったのである。初めて尋ねた日、自宅の周りにある自然発生したのか、植えたのかわからないが、いろいろなハーブを摘んでは食べさせられた。つまり、南雲さんにとっては植物の生育を観察する手近なサンプルなのである。畑へ行ってみて驚いたのは、広い面積の土の柔らかいことである。今まで見た有機農法の畑では無かった感触なのです。
この畑では長い大根も子供の力でスーッと引き抜ける。その土の秘密は、畑の奥に山と積んである堆肥にあった。完熟して土と化した堆肥をダンプ100台分入れたというから柔らかい筈である。いろいろな野菜がのびのび育っているのが分かる。南雲農法の特徴は、考案した独特の堆肥造りにあり、切り返しの時に使うキパワーソルトの希釈液にノウハウが秘められています。もちろんキパワーソルト希釈の葉面散布にも工夫が凝らされている。
キパワーソルト・ホームページ 赤城山麓 PSJ研究所
南雲さんは、もともと腕の立つ料理人であった。美味しさ 追求しているうちに、 本物の素材は自分で作らねば本当に良いものは出来ないと農業を始めた。だから真新しいキャンバスに自由な色を塗る、従来の農家にない発想で作物造りを始めたから、既存の農家からは異端視されたのも無理はない。
写真左の手に持つ野菜は、西洋種のゴボウでである。グロテスクな形からサラダにすると美味なることは想像し難い。写真右・温室栽培のトマトも、もともと原産地ペルーの高原地帯である乾燥した高地の環境を再現し(室内環境造りにいろいろ工夫が見られる)遠い遺伝子DNAレベルの性質を呼び覚まして上げるような育て方をする。 それで、西洋ゴボウもトマトも性質、性格を最大限に発揮できる自由な育ち方をする。結果、トマトは水分が25%も少ない、濃密な味わいと甘さで、契約したレストランや納入先から引く手あまたで大人気となる。
南雲さんの趣味は多彩で、そのひとつに渓流釣りがある。ある年の夏、沢山釣ってきた岩魚をキパワーソルト味で燻製にしたものを頂いた。 今まで食べたどんな燻製にも勝る美味であったが、何をするにも器用なのである。その昔、料理人時代には「氷の彫刻」で、さまざまなコンクールで賞を総なめにした過去を知る人は少ない。特に、「月花」のオーナー・シェフ村上元彦さんとコンビで、様々な大会・コンクールで名声を博したことを最近村上さんとの出会いで初めて聞いた。
自然農法や有機農業を営んでいる農家はそれぞれ工夫を凝らしているとは思うが、南雲さんのような奇想天外ではあるが自然循環型の農法で、生産効率を上げたら、食糧自給率改善に貢献できる可能性大と思う。これからの新発想による開発がますます期待できる。